口呼吸していたら要注意 ―― それは「緊急事態」のサインかもしれません
「院長、動物の呼吸で気をつけることってありますか?」
はい。実は、体調を見極めるうえで、呼吸の様子ほど重要なサインはありません。
なかでも「口呼吸」は、動物にとって非常に強いストレスと危険を伴う状態です。
ただし、ここには一つ大きな例外があります。それが犬です。
犬の口呼吸は“体温調節”
犬は汗をかけないため、口を大きく開けて舌を出し、ハァハァと呼吸することで体温を下げています。いわゆる「パンティング」と呼ばれる正常な生理現象です。暑いとき、運動したあと、興奮したときに見られます。
つまり、犬にとっての口呼吸は必ずしも異常ではありません。
ところが、それ以外の動物では話がまったく違います。
ほとんどの動物は「鼻呼吸」が基本
小鳥、うさぎ、チンチラ、猫、ハムスター。これらの動物は、原則として鼻呼吸です。
つまり、口を開けて呼吸している時点で、すでに呼吸がかなり苦しい状態に陥っています。
口呼吸が見られる原因としては、
・肺炎
・心不全
・気道の閉塞
・胸腔内の液体や空気の貯留
・重度の貧血
・中毒
・外傷
など、どれも軽いものではありません。
だからこそ、犬以外の動物が口呼吸をしていたら、それは緊急事態です。
検査より先にやるべきことがあります
「すぐにレントゲンを撮った方がいいですか?」と聞かれることがあります。
気持ちはよく分かります。でも、呼吸が苦しい動物にとって、保定や移動、姿勢変換はそれ自体が大きな負担になります。無理に検査を優先すると、検査中に呼吸が止まってしまうリスクすらあります。
ですから、まず最初にやるべきことは検査ではありません。
・安静を保つ
・できるだけ動かさない
・酸素を吸わせる
この3つが最優先です。酸素吸入によって呼吸が少しでも楽になり、体が落ち着いてから、はじめて検査や治療の検討に入ります。
入院が必要になることもあります
「入院になりますか?」と不安に思われる方も多いですが、口呼吸が見られる動物は、多くの場合入院が必要です。少なくとも、数時間は酸素環境下で観察と治療を行います。
実際には、まず2時間程度の酸素吸入を行い、その反応を見てから次のステップを判断します。呼吸が落ち着けば検査に進めますし、改善しなければ治療を優先します。
飼い主さんにお願いしたいこと
口呼吸をしている動物を見たときに、一番してほしくないのは、
・写真を撮る
・動画を撮る
・様子を見る
・自分で何とかしようとする
こうした行動です。もちろん記録は大切ですが、その前に命があります。
「おかしい」と思ったら、すぐに連絡し、すぐに連れてきてください。
夜でも、休日でも、迷わず連絡してください。
まとめ
犬の口呼吸は体温調節。
それ以外の動物の口呼吸は異常。
呼吸困難は命に関わる。
検査より先に安静と酸素。
必要なら即入院。
口呼吸は、体が出す最大級のSOSです。
そのサインを見逃さず、ためらわず、行動してください。その数分が、生死を分けることもあります。





















