緊急提言:マダニから身を守る唯一の方法 ―― 「持ち込まない」ために、いま出来ること
「院長、マダニから感染するSFTSのニュース、最近よく見ますよね……。」
はい。本当に増えています。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、まだ分かっていないことも多い感染症ですが、人にも動物にも感染し、しかも致死率が非常に高い、極めて危険なウイルス感染症です。
犬や猫だけでなく、人の死亡例も報告されています。
さらに先日、動物病院で働く獣医師がSFTSで亡くなったという報道もありました。決して「一部の地域の話」でも、「特殊な人の話」でもありません。私たち動物病院の現場にいる人間も、そして飼い主さんご自身も、現実的にリスクの中にいます。
だからこそ「持ち込まない」が唯一の防御
マダニ対策で一番大切なことは何か。
それは病院や家庭にマダニを持ち込まないことです。
「見つけてから取ればいい」では遅いのです。
マダニは非常に小さく、毛の中に潜り込み、簡単には見つかりません。そして、咬んだ時点で感染が成立する可能性があります。
そのため、厚木ひまわり動物病院では、7月1日より、マダニ予防薬を使用していない犬猫の院内立ち入りを制限させていただくことにしました。かなり踏み込んだ対策ですが、これは過剰反応ではありません。動物病院は多くの動物と人が集まる場所であり、感染リスクが集中する場所だからです。
私たちには、目の前の患者さんだけでなく、地域全体に対して感染症を広げない責任があると考えています。
「どれか一つ」では足りない理由
マダニ対策には、大きく分けて3種類の薬があります。
それぞれに長所と短所があり、どれか一つだけでは必ず“隙”ができます。 だから、私たちは併用を強くおすすめしています。
① 飲むタイプ:効くけれど「咬まれてから」
飲むタイプの薬は、有効成分が血液中に入るため、体のどこを咬まれても効果があります。咬んだマダニは死滅します。
ただし欠点は、「咬まれないと効かない」ことです。つまり、感染リスクそのものをゼロにはできません。
② 付けるタイプ:咬まれる前に効くが「全身ではない」
首元などに滴下するタイプは、皮脂を通じて体の表面に薬が広がり、接触したマダニを殺します。咬まれる前に効く可能性があるのは大きなメリットです。
しかし、皮脂が届きにくい場所、例えば足先、しっぽの先、顔まわりなどには効果が十分に及ばないことがあります。
③ スプレータイプ:細かい部分をカバーできる
スプレータイプは、手足、顔まわり、しっぽの先など、付けるタイプが届きにくい場所に直接使えます。また、ベッドやケージ、寝床に使うことで環境中のマダニ対策にもなります。
ただし、全身に大量に使うとベタつきや匂いが出たり、嫌がる子もいます。あくまで補助的な役割です。
だから「併用」がベスト
飲むタイプで「どこを咬まれても殺す」。
付けるタイプで「咬まれる前に殺す」。
スプレーで「隙間を埋める」。
この三つを組み合わせることで、初めて“穴のない防御”になります。費用はそれなりにかかります。でも、それで守られるのはペットだけではありません。飼い主さんご自身、ご家族、ご友人、そして動物病院のスタッフや他の患者さんです。
室内飼いの猫ちゃんも例外ではありません
「うちは外に出ないから大丈夫ですよね?」とよく聞かれます。
残念ながら、大丈夫ではありません。
マダニは人の靴、衣服、カバンなどに付着して、普通に家の中に入ってきます。春から秋にかけては、ちょっとした草むらにも大量にいます。外に出ない猫ちゃんでも、感染リスクはゼロではないのです。
まとめ
SFTSは非常に危険な感染症で、現実に人も動物も亡くなっています。
唯一の防御は「持ち込まない」こと。
そのためには薬を使った予防が不可欠。
しかも、どれか一つではなく、併用して隙をなくすことが重要。
室内飼いの猫ちゃんも例外ではない。
これは脅しではなく、現場にいる者としての切実なお願いです。
どうか、「自分の家だけは大丈夫」と思わず、地域全体の安全のために、そして何よりご自身とご家族の命を守るために、真剣にマダニ対策に向き合ってください。
それが、今できる、そして唯一の現実的な対策だと、私は思っています。





















