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厚木ひまわり動物病院ブログ

野鳥を見つけたらどうする?院長が語る「野鳥保護との正しい向き合い方」

こんにちは、厚木ひまわり動物病院です。
動物好きな方であれば誰しも、道路や公園でうずくまる野鳥を見かけたら「助けなきゃ」と思ってしまうものですよね。
実際、当院にも「野鳥を保護したのですがどうしたらいいですか?」というお問い合わせが毎年のように寄せられます。

しかし、野鳥との関わり方には注意すべき点が多く、善意だけでは思わぬトラブルを招くことがあります。
今回は、院長の考えをもとに、野鳥を見つけた際の正しい対処法について詳しく解説していきます。


1. 「院長、患者さんが道路で野鳥を保護したと相談がありました!」

まず最初に、院長の回答はとても明確です。

「野鳥は危険です。触らない方が無難です。」

野鳥というと、私たちの身近な存在であり、可愛らしく見えることも多いですが、
実は 野鳥はさまざまな病原体や寄生虫を持っている可能性が高い のです。

● 野鳥が持つ可能性のあるリスク

  • ダニ(特にマダニ)
  • ノミ
  • トリサルモネラ症
  • クリプトコッカス症
  • オウム病(クラミジア症)
  • インフルエンザウイルス など

これらは人間にも、そして自宅で飼っている小鳥や犬・猫にも感染する可能性があります。
そのため、安易に手で触れたり、自宅へ連れ帰ることは大変危険です。

また、法的にも野生鳥獣は「鳥獣保護管理法」で守られており、勝手に捕獲・飼育することは許可なくしてできません。

院長:
「冷たいようですが、当院では野鳥の診察はお断りしています。」

これは“野鳥に関わりたくない”のではなく、
院内に感染症を持ち込むリスクから、他の患者動物や飼い主さんを守るための判断 です。


2. 「でも放っておけない、と仰っていますが…」

多くの方が「見捨てたくない」という気持ちになるものです。
しかし、院長はこう続けます。

「自然の営みを受け入れましょう。」

特に道路端や家の近くで見かけるひな鳥の場合、
実は 親鳥が見守っている “巣立ちの練習中” であることが非常に多い のです。

● 巣立ちのひな鳥の特徴

  • 羽がまだ短く、うまく飛べない
  • 地面でじっとしている
  • 親鳥が近くの電線や枝から見守っている

人間の目には「弱っている」「助けが必要」と見えてしまいますが、
自然界ではこの過程を通じて、ひな鳥は飛ぶ技術や危険を察知する能力を学んでいきます。

むしろ、
人間が不用意に連れ去ってしまうことこそ“親鳥から引き離す”行為になってしまう のです。

院長:
「あえて野生の世界の現実を受け入れましょう。」

これが最も自然で、鳥にとっても幸せな選択であることを理解していただきたいと思います。


3. 「飛べないみたいで、車にひかれたり、猫に食べられてしまいそうで…なんとかならないでしょうか?」

このお気持ちはとてもよく分かります。
しかし、人が手を出しすぎると、かえって自然のサイクルを乱してしまう可能性があります。

とはいえ、本当にケガをしていたり、明らかに弱っている鳥を見かけることもあります。

そこで院長が提案するのは次の方法です。

「怪我しているなら、自然環境保全センターへ相談を!」

厚木市には、怪我をした野鳥を保護してくれる『自然環境保全センター』 があります。
県内で負傷野生動物を引き取り、治療や保護を行う専門の施設です。

ただし、

  • 鳩やカラスは受け入れ対象外
  • 持ち込む前に必ず電話確認が必要
    というルールがあります。

● 自然環境保全センター(神奈川県)

  • 怪我した野鳥の保護を行う
  • 許可なく個人が連れ帰るよりは、確実かつ安全
  • 飼育許可がない個人に代わって適切に対応してくれる

院長:
「どうしても助けたい時は、まず電話で相談してください。」

病院への持ち込みではなく、専門機関につなぐことが、
結果として野鳥を守る最善の選択になります。


4. では、一般の人ができる正しい対応とは?

野鳥を見つけたとき、以下の3段階で判断するのが理想的です。

① 本当に助けが必要かを確認する

ひな鳥の場合、多くは「巣立ち練習中」であり、救助は不要。
親鳥が必ず近くで見守っています。

② むやみに触らない・持ち帰らない

感染症予防の観点からも、法律上の理由からも重要です。

③ 明らかに怪我している場合は、自然環境保全センターへ連絡

自分で診ようとしない・自宅に連れ込まない。
専門施設に任せるのが最善です。


5. 野鳥と飼い鳥の距離を保つことが大切

野鳥に付着しているダニやウイルスは、自宅の鳥に深刻な病気をもたらすことがあります。
特に小鳥を飼っている飼い主さんは、
絶対に自宅へ野鳥を持ち帰らない
ことを徹底してください。

同じ鳥でも、野鳥とペットバードは環境も免疫状態もまったく異なります。
病院での対応も別物と考える必要があります。


6. まとめ:野鳥は“助ける”より“関わらない”方が鳥を守ることにつながる

野鳥を道路で見つけると心が動かされるのは、動物好きとして当然のことです。
そのやさしさ自体はとても素晴らしいものです。

しかし、

  • 感染症の危険
  • 法律の制限
  • 自然界の営み
  • 専門施設の存在

これらを踏まえると、“安易に保護する”という行為は、
人にも野鳥にも良い結果をもたらさない場合がほとんどです。

むしろ、正しい対応を知り、必要に応じて専門機関につなぐことこそが、真の「優しさ」なのです。


野鳥を見つけたときは、まず落ち着いて状況を判断し、迷ったら自然環境保全センターへ相談してください。

当院でも、飼い鳥の健康を守るためのアドバイスはいつでも受け付けています。
どうぞお気軽にご相談ください。