院長に聞く「うさぎのエンセファリトゾーン」とは?知っておきたい症状・診断・対策まとめ
こんにちは。当院のブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、うさぎを飼っている方なら一度は耳にしたことがあるかもしれない「エンセファリトゾーン」について、院長に解説してもらいました。
うさぎ愛好家の間では恐れられている感染症ですが、正しい知識を持ち、早めに対策することでうさぎの健康を守ることができます。
この記事では、飼い主さんからよくいただく質問をベースに、できるだけわかりやすくまとめました。
1. 「院長、うさぎのエンセファって何ですか?」
院長の答え:
「エンセファリトゾーンというカビの仲間が感染して起こる病気のことです。」
エンセファリトゾーン(Encephalitozoon cuniculi)は、分類上は“微胞子虫”と呼ばれる真菌(カビ)に近い性質をもった寄生体です。
多くのうさぎに感染し、脳や神経、眼、腎臓などに影響を及ぼすことで知られています。
世界中のうさぎの間で広く見られ、日本でも例外ではありません。
特に室内飼いであっても油断できず、症状が出るまで感染に気づかないケースも多くあります。
2. 「家にいても移るんでしょうか?」
院長の答え:
「感染率は50%といわれており、家庭のうさぎでも半数がすでに感染している可能性があります。」
驚かれる方が多いのですが、研究ではうさぎの約50%が感染経験ありとされています。
これは、すでに感染していても症状が出ない“キャリア”のうさぎが多いことを示しています。
感染経路としては
- 母子感染(お母さんから赤ちゃんに感染)
- 尿を介した感染
- 多頭飼育での接触感染
などがあります。
「家から出さないから安心」とは言い切れません。
ペットショップにいた時点で感染している場合も多く、迎えた時点で既に感染している可能性もあります。
3. 「検査する方法はありますか?」
院長の答え:
「検査には比較的大量の血液が必要で、タイミングによっては結果が微妙になるため簡単ではありません。」
検査には以下の方法があります。
● 抗体検査(血液検査)
もっとも一般的ですが、抗体が上昇していない時期は“陰性”と出てしまうことがあります。
また、陽性でも「今現在症状が出るほど活性化しているのか」は判断できないという難しさもあります。
● 血液量の問題
うさぎは体が小さいため、一度に採れる血液量には限界があります。
そのため、必要量を確保できないケースや体調への負担を考慮し、検査を断念するケースもあります。
検査自体が“絶対に診断できる”ものではないため、臨床症状と組み合わせて総合的に判断します。
4. 「どのように診断するのですか?」
院長の答え:
「斜頸や眼の症状など、特徴的な神経症状から疑います。」
エンセファリトゾーンは脳や神経、眼に強い影響を与えるため、症状は比較的特徴的です。
● よく見られる症状
- 首が傾く(斜頸)
- 眼球が左右にギョロギョロと動く(眼振)
- 片目の白濁(白内障)
- 虹彩の炎症
- ふらつき、転倒
- 食欲不振、元気消失
これらの症状は他の病気でも起こり得るため、
症状の組み合わせ、発症時期、環境、検査結果を踏まえて総合的に診断します。
5. 「対策方法はありますか?」
院長の答え:
「治療薬はあるものの回復が難しいため、定期的な診察が最大の対策です。」
エンセファリトゾーンには治療薬(駆虫薬)が知られていますが、
症状が進行すると完全な回復が難しいケースも少なくありません。
では、何をすれば良いのか?
● 元気なうちに検査を受ける
キャリアであるかどうかを知ることは大きな判断材料になります。
● 予防的に薬を飲ませる
症状が出る前に薬を与えることで、重症化を防げる可能性があります。
● 定期的に病院でチェック
斜頸や眼の異常は、早期発見が非常に重要です。
● 何か異常を感じたらすぐ受診
「少し傾いている?」「目がいつもと違う?」
そんな小さな変化が命を守るサインになることもあります。
6. まとめ:正しい知識と早期対応が、うさぎの命を救います
エンセファリトゾーンは、うさぎの病気の中でも特に厄介で、飼い主さんを不安にさせるものです。
しかし、正しい知識と日頃からの観察、早めの受診があれば、重症化を防ぐ可能性が大いに高まります。
当院では、症状が出てしまった子はもちろん、
「念のため検査したい」
「予防方法を知りたい」
といったご相談にも丁寧に対応しています。
うさぎはとてもデリケートな動物です。
小さな変化にもすぐ気づけるよう、日頃からよく観察し、気になることがあればお気軽にご来院ください。





















