胃腸、尿路、心臓、肺、歯を画像で詳しく確認します
今回は、うさぎのレントゲン検査の様子をご紹介します。
うさぎは体調不良を隠す傾向があり、外見や触診だけでは病気の原因を判断できないことがあります。
食欲が落ちた、便が小さくなった、便が出ない、呼吸が速い、尿の色がおかしい、食べ物を口から落とすといった症状が見られる場合には、体の中の状態を確認するためにレントゲン検査を行います。
今回の検査では、まず下半身を横から撮影し、続いて上半身から口の周囲までを横から撮影しました。
さらに、同じ部位を別の方向から撮影し、体の中を立体的に評価します。
まずは下半身を横から撮影します
最初に、お腹から骨盤にかけての範囲を横向きで撮影します。
この撮影では、主に胃や腸、膀胱、腎臓、尿路、骨盤などを確認します。
うさぎの診療で非常に多いのが、食欲不振や便の減少です。
うさぎは何らかの原因で食べる量が減ると、胃腸の動きも低下しやすくなります。
レントゲン検査では、次のような点を確認します。
- 胃が異常に大きくなっていないか
- 胃の内容物が過剰にたまっていないか
- 胃や腸にガスがたまっていないか
- 腸の一部だけが拡張していないか
- 便の材料がどの程度残っているか
- 異物や閉塞を疑う所見がないか
食欲不振と便の減少があっても、すべてが単純な胃腸うっ滞とは限りません。
腸閉塞が疑われる場合には、一般的な胃腸うっ滞とは治療方針が異なります。
そのため、流動食や消化管運動を促す薬を使用する前に、レントゲン検査でお腹の状態を確認することが重要です。
尿路結石や膀胱の状態も確認します
下半身のレントゲン撮影では、尿路の異常も確認します。
うさぎの尿には、カルシウム成分が多く含まれることがあります。
膀胱内に砂状の物質が多くたまったり、膀胱や尿道に結石ができたりすると、排尿時の痛み、血尿、頻尿、尿が出にくいなどの症状が現れることがあります。
レントゲン検査では、膀胱や尿道に結石を疑う白い影がないか、膀胱が異常に大きくなっていないかなどを確認します。
ただし、尿路の病気をレントゲン検査だけですべて診断できるわけではありません。
必要に応じて、尿検査や超音波検査を組み合わせ、膀胱内の沈殿物、粘膜の状態、尿の性状などを詳しく調べます。
次に上半身から口の周囲までを撮影します
次に、胸部から頭部、口の周囲までを横向きで撮影します。
この撮影では、主に心臓、肺、気管、胸腔内の状態に加え、歯や顎の骨を確認します。
呼吸が速い、呼吸時にお腹が大きく動く、鼻汁が出る、疲れやすいといった症状がある場合には、胸部の画像が重要です。
レントゲン検査では、次のような点を確認します。
- 心臓の大きさや形
- 肺の透過性
- 肺炎や肺水腫を疑う影
- 胸腔内の液体や腫瘤
- 気管や周囲臓器の位置
- 胸部の骨の異常
うさぎでは、呼吸器症状がある場合、保定による緊張だけでも呼吸状態が悪化する可能性があります。
そのため、撮影前に現在の呼吸状態を確認し、無理に撮影することが危険と判断した場合には、酸素吸入や治療を優先することがあります。
うさぎの歯の診断にもレントゲンが重要です
うさぎの歯は、前歯だけでなく奥歯も生涯伸び続けます。
口の中から見える部分だけを確認しても、歯全体の状態を評価することはできません。
うさぎの歯の大部分は、歯茎や顎の骨の中にあります。
レントゲン検査では、次のような異常を確認します。
- 前歯や奥歯の伸び方
- 上下の歯のかみ合わせ
- 歯根の伸長や変形
- 顎の骨の変化
- 歯根周囲の感染
- 膿瘍を疑う変化
- 鼻や目の周囲への影響
牧草を食べなくなった、柔らかい物だけを選ぶ、食べ物を口から落とす、よだれが増えた、涙が出るといった症状では、歯の異常が隠れていることがあります。
口の中を見ただけでは問題が目立たなくても、レントゲン検査で歯根の異常が見つかることがあります。
なお、歯をさらに詳しく評価する必要がある場合には、通常のレントゲン撮影に加え、頭部の専用撮影やCT検査などが必要になることもあります。
前半身と後半身を分けて撮影する理由
うさぎの全身を一枚の画像に収めることはできますが、一枚に広い範囲を入れるほど、一つ一つの臓器や歯が小さく写ります。
また、胸部と腹部では、適切な撮影条件が異なることがあります。
そのため、診断したい部位に合わせて、前半身と後半身を分けて撮影することがあります。
撮影範囲を絞ることで、目的とする臓器をより大きく、鮮明に、また正しい形状で確認しやすくなります。
ただし、症状や体格によって撮影範囲は異なります。
全身を一度に撮影することもあれば、胸部、腹部、頭部などをさらに分けて撮影することもあります。
レントゲンは一方向だけでは十分に評価できません
レントゲン画像は、三次元の体を平面の画像として写したものです。
横から一枚撮影しただけでは、複数の臓器や骨が重なって写ります。
そのため、異常な影が体の左右どちらにあるのか、手前にあるのか奥にあるのかを、一方向の画像だけで判断することは困難です。
原則として、同じ部位を横方向と、背中側またはお腹側からの方向で撮影します。
互いに直角に近い二方向から撮影することで、病変の位置や大きさを立体的に考えることができます。
例えば、横向きの画像では膀胱付近に見える白い影が、別の方向から見ると消化管の中にあることが分かる場合があります。
反対に、一方向では臓器と重なって見えなかった異常が、別の方向でははっきり確認できることもあります。
「一枚撮って異常が見えなかったから大丈夫」とは限りません。
必要な方向から適切に撮影することが、正確な診断につながります。
正しい姿勢で撮影することが大切です
レントゲン検査では、単に画像を撮ればよいわけではありません。
体が大きくねじれていると、臓器や骨の位置が変わって写り、正常なのか異常なのか判断しにくくなります。
左右の骨や関節ができるだけ重なるようにし、背骨が不自然に曲がらないよう、撮影する部位に合わせて姿勢を整えます。
一方で、理想的な姿勢を作るために、うさぎを強く引っ張ったり、長時間押さえつけたりしてはいけません。
画像の正確さと、うさぎの安全性の両方を考えながら位置を調整します。
高齢のうさぎや、関節、背骨に病気があるうさぎでは、無理に手足を伸ばさず、その子が耐えられる姿勢で撮影することもあります。
うさぎは突然飛び跳ねることがあります
うさぎは診察台の上で動かないように見えても、恐怖を感じた瞬間に、突然強く飛び跳ねることがあります。
うさぎの後ろ足の筋力は非常に強い一方、背骨は大きな力に耐えられないことがあります。
不安定な状態で激しく蹴り出すと、腰の骨や関節を傷める危険があります。
また、高い撮影台から飛び降りれば、骨折や脱臼などの事故につながります。
そのため、撮影中はうさぎの動きや力の入り方を常に確認し、飛び跳ねそうになった場合にすぐ対応できる状態を保ちます。
当院では獣医師が保定の強さを調整します
当院では、うさぎの体調、性格、動き方を確認しながら、獣医師が撮影時の位置決めと保定を行っています。
複数の人が別々の方向から強く押さえると、うさぎがどの方向へ逃げようとしているのか、どこに力が集中しているのか分かりにくくなることがあります。
そのため、うさぎの反応を直接感じ取りながら、必要以上に力を加えないよう、保定の加減を調整します。
撮影補助具なども利用し、可能な限り短時間で撮影します。
実際にX線を照射する際には、撮影者の被ばくを避けるための安全対策を行い、人の手や体が照射範囲に入らないよう注意します。
うさぎの安全だけでなく、撮影に関わる人の放射線防護も重要です。
強く暴れる場合は無理に撮影しません
すべてのうさぎが、意識のある状態で安全に撮影できるとは限りません。
強い恐怖で激しく暴れる場合や、痛みによって姿勢を保てない場合には、無理に押さえ続ける方が危険です。
必要に応じて鎮静処置を検討することもあります。
ただし、鎮静には一定のリスクがあるため、年齢、呼吸状態、循環状態、持病などを確認したうえで判断します。
一方、呼吸状態が非常に悪い場合や、体温が低下している場合には、レントゲン検査そのものを延期し、まず酸素吸入、保温、注射などの治療を優先することがあります。
検査よりも先に命を守る処置が必要なケースもあります。
レントゲン検査だけで確定できない病気もあります
レントゲン検査は非常に重要ですが、すべての病気をレントゲンだけで確定できるわけではありません。
胃腸の動き、臓器内部の構造、膀胱内の細かな変化などは、超音波検査を組み合わせた方が詳しく分かることがあります。
また、食欲不振では血液検査、検便、口腔内検査などが必要です。
歯の病気では、通常の撮影だけでなく、頭部の追加撮影やCT検査が必要になる場合もあります。
レントゲン検査の結果と、問診、身体検査、血液検査、尿検査などを組み合わせ、総合的に診断します。
うさぎの小さな異常を見逃さないために
うさぎは体調不良を隠しやすく、飼い主様が異常に気づいた時点で、病気が進行していることがあります。
次のような変化が見られた場合には、早めに動物病院へご相談ください。
- 食欲が低下した
- 牧草を食べなくなった
- 便が小さい、または少ない
- 便が出ていない
- お腹が張っている
- 血尿が出た
- 排尿時に痛そうにしている
- 呼吸が速い
- 食べ物を口から落とす
- よだれが増えた
- 体重が減った
- 動きが少なくなった
病気が重症化する前に検査を行うことで、治療の選択肢を増やし、回復までの負担を減らせる可能性があります。
今日も安全に撮影できました
今回のレントゲン検査では、まず下半身を横から撮影し、胃腸や尿路の状態を確認しました。
続いて上半身から口の周囲までを撮影し、心臓、肺、歯などを確認しました。
さらに別の方向からも撮影し、体の中を立体的に評価します。
うさぎは突然飛び跳ねる可能性があるため、体へかかる力を確認しながら、短時間で安全に撮影することが大切です。
※本記事は当院で行っているうさぎのレントゲン検査を、飼い主様向けに分かりやすく紹介したものです。撮影する部位、方向、枚数、保定方法、鎮静の必要性は、症状、年齢、体格、全身状態によって異なります。