Instagram(院長)
Instagram(病院)
アクセス
電話予約
お問い合わせ
予約

共通

動物の寿命は、思っているより短い

「元気だから様子見」が長すぎることもあります

動物病院で診察をしていると、心臓病、歯周病、外耳炎、皮膚病、関節の痛みなど、治療が必要な病気が見つかっていても、

「でも、まだ元気だから」
「ごはんは食べているから」
「年だから仕方ない」
「自然に任せたい」

という理由で、治療を始めずに様子を見るケースがあります。

もちろん、飼い主様が動物のことを大切に思っていないわけではありません。
むしろ、大切だからこそ、無理な治療をさせたくない、薬を増やしたくない、できるだけ自然に過ごさせてあげたい、というお気持ちなのだと思います。

その気持ちは、とてもよく分かります。

ただ、動物病院の立場から見ると、「元気そうに見える」ことと「苦しくない・痛くない・つらくない」ことは、必ずしも同じではありません。

動物は、つらさを言葉で伝えられません

人間であれば、胸が苦しい、口が痛い、耳がかゆい、体がだるい、歩くと痛い、ということを言葉で説明できます。

しかし、動物はそれを言葉にできません。

心臓病で少し息苦しくても、歯周病で口の中が痛くても、外耳炎で耳がかゆくても、皮膚病で眠れないほどかゆくても、「なぜ自分がつらいのか」を理解することはできません。

ただ、なんとなく苦しい。
なんとなく痛い。
なんとなくかゆい。
なんとなく落ち着かない。

その状態のまま、毎日を過ごしていることがあります。

それでも動物たちは、飼い主様のことが大好きです。

ごはんの時間になれば喜びます。
お散歩に誘われれば行きたがります。
名前を呼ばれればしっぽを振ります。
なでられれば嬉しそうにします。

だからこそ、飼い主様から見ると「元気そう」に見えてしまうことがあります。

でも、食べているから大丈夫。
歩いているから大丈夫。
しっぽを振っているから大丈夫。

必ずしもそうとは限りません。

「自然に任せる」とは何かを考える

病気が見つかった時に、「自然に任せたい」とおっしゃる飼い主様もいます。

その考え方自体を、否定するつもりはありません。

命には限りがありますし、どこまで治療するか、どこまで検査するかは、ご家族ごとに考え方が違って当然です。

ただ、一つ考えていただきたいことがあります。

そもそも、私たちが動物を家庭で飼育すること自体が、完全な自然ではありません。

犬も猫も、小鳥もうさぎも、人間と一緒に暮らし、人工的に作られたフードを食べ、室内で温度管理された環境の中で生活しています。

ワクチンを打ち、予防薬を使い、トリミングをし、爪を切り、ケージやベッドを用意し、人間社会の中で安全に暮らせるようにしています。

その中で、病気だけを「自然に任せる」というのは、少し理不尽な面もあるのではないかと思います。

もちろん、何でも積極的に治療すればよいという話ではありません。

大切なのは、「自然に任せる」という言葉の中に、痛みや苦しさやかゆみを放置することが含まれていないかを考えることです。

動物の時間は、人間よりずっと早く進みます

人間にとっての数ヶ月や数年は、それほど長く感じないこともあります。

「もう少し様子を見よう」
「来年考えよう」
「悪くなったら治療しよう」

そう考えることもあると思います。

しかし、動物の寿命は人間よりずっと短いです。

犬や猫の一年は、人間の感覚で考えると何年分にも相当します。小鳥やうさぎでも、体が小さい分、状態が変化するスピードが非常に早いことがあります。

人間にとっての半年は、動物にとってはとても長い時間です。

もしその半年間、口が痛かったら。
もしその半年間、耳がかゆかったら。
もしその半年間、息苦しさを抱えていたら。
もしその半年間、体のどこかに違和感を抱え続けていたら。

それは、動物にとって決して短い時間ではありません。

「まだ元気だから」と数ヶ月、数年と様子を見ることが、結果的に動物に長い我慢をさせてしまうこともあります。

心臓病は、元気に見えても進行します

心臓病の子では、初期には目立った症状が出ないことがあります。

ごはんも食べる。
散歩にも行く。
家では普通に過ごしている。

そのため、「まだ大丈夫」と思われることがあります。

しかし、心臓病は見た目に元気そうでも、少しずつ進行していることがあります。

咳が増えた。
疲れやすくなった。
寝ている時間が増えた。
呼吸が早い。
散歩の途中で止まる。

こうした変化が出ている時には、すでに心臓に負担がかかっている可能性があります。

心臓病の治療は、ただ寿命を延ばすためだけのものではありません。
息苦しさを減らし、心臓への負担を軽くし、今の生活を少しでも楽にするための治療でもあります。

歯周病は「年だから口が臭い」ではありません

歯周病も、よく見逃されやすい病気です。

「年を取ったから口が臭い」
「歯石はあるけど、ごはんは食べている」
「硬いものも噛めているから大丈夫」

そう思われることがあります。

しかし、歯周病は口臭だけの問題ではありません。

歯ぐきに炎症が起こり、歯の周りの組織が壊れ、痛みが出ます。進行すると、歯がぐらついたり、膿が出たり、顎の骨にまで影響が及ぶこともあります。

動物は、口が痛くても食べます。

食べることは生きるために必要だからです。
食べているから痛くない、とは限りません。

片側だけで噛んでいる。
丸飲みしている。
硬いものを避ける。
口を触られるのを嫌がる。
よだれが増える。
口臭が強い。

こうした変化がある場合、口の中に痛みや炎症がある可能性があります。

外耳炎や皮膚病の「かゆみ」も大きなストレスです

外耳炎や皮膚病も、「命に関わる病気ではないから」と軽く見られがちです。

しかし、かゆみは動物にとって大きなストレスです。

耳がかゆい。
皮膚がかゆい。
夜も落ち着かない。
掻き壊して痛くなる。
またかゆくなる。

この繰り返しは、動物にとってかなりつらい状態です。

人間でも、強いかゆみが何日も続けば眠れませんし、気持ちも落ち着きません。動物も同じです。

外耳炎は繰り返すほど耳の中が厚く硬くなり、治りにくくなることがあります。皮膚病も、慢性化すると治療に時間がかかることがあります。

「少しかゆそうだけど元気だから」ではなく、早めに原因を確認し、かゆみを減らしてあげることが大切です。

様子を見ること自体が悪いわけではありません

ここで誤解していただきたくないのは、「様子を見ること」がすべて悪いわけではない、ということです。

すぐに大きな検査や治療をすることだけが正解ではありません。

年齢、病気の進行度、性格、生活環境、費用、通院の負担、ご家族の考え方などによって、選択肢は変わります。

ただし、本来の「様子を見る」とは、何もしないことではありません。

今どのような状態なのか。
何を観察するのか。
どのくらいの期間見るのか。
どんな変化があれば再診するのか。
悪化した場合、次に何をするのか。

こうした線引きをした上で経過を見ることが、本当の意味での様子見です。

病気があると分かっているのに、数ヶ月、数年と何も確認しないまま過ごすことは、様子見ではなく、結果的に放置に近くなってしまうことがあります。

治療は「無理をさせること」ではありません

治療というと、強い薬を使うこと、大きな手術をすること、動物に負担をかけることを想像される方もいるかもしれません。

しかし、治療の目的はそれだけではありません。

痛みを減らす。
かゆみを減らす。
息苦しさを軽くする。
食べやすくする。
眠れるようにする。
不安やストレスを減らす。

こうしたことも、立派な治療です。

完治を目指す治療もあれば、症状を和らげる治療もあります。
積極的な治療もあれば、負担を抑えた治療もあります。
検査をしっかり行う方法もあれば、今できる範囲で楽にしてあげる方法もあります。

大切なのは、「何もしない」以外にも選択肢があるということです。

大切な家族だからこそ、早めに楽にしてあげる

動物は、自分で病院へ行くことができません。

「歯が痛いから診てもらいたい」
「耳がかゆいから薬が欲しい」
「最近息が苦しい気がする」

そう言うこともできません。

だからこそ、気づいてあげられるのは飼い主様だけです。

そして、治療を受けさせるかどうかを決められるのも、飼い主様だけです。

「自然に任せたい」
「年だから仕方ない」
「まだ元気だから」

そう思った時こそ、一度立ち止まって考えてみてください。

この子は本当に苦しくないだろうか。
痛みを我慢していないだろうか。
かゆみで眠れない時間はないだろうか。
もっと楽にしてあげられる方法はないだろうか。

治せるものは、できるだけ早く治してあげる。
完全に治せない病気でも、少しでも楽にしてあげる。
その子に合った無理のない方法を考える。

それは、飼い主様にしかできない愛情だと思います。

「元気そう」に見えるうちに、ご相談ください

動物の寿命は、私たちが思っているより短いものです。

人間にとっての少しの先延ばしが、動物にとっては長い我慢になってしまうことがあります。

病気があると分かっている時、症状が少しでも気になる時、「まだ元気だから」と長く様子を見すぎないことが大切です。

当院では、無理に治療を押しつけるのではなく、その子の状態、ご家族の考え方、生活環境に合わせて、検査や治療の選択肢をご提案しています。

「どこまで治療するべきか分からない」
「薬を始めるべきか迷っている」
「年齢的に負担が心配」
「自然に近い形で、でも苦痛は減らしてあげたい」

そのようなご相談でも大丈夫です。

大切なのは、痛い、苦しい、かゆいをそのままにしないこと。

動物たちの限られた時間を、少しでも楽に、穏やかに過ごせるように、気になることがあれば早めにご相談ください。

関連記事