「院長、うさぎのうんちって、何を見ればいいんですか?」
うさぎの健康管理で、これほど大切で、これほど見落とされがちなものはありません。
それが「うんち」です。
体重計よりも、血液検査よりも、もしかしたらレントゲンよりも、日常の変化をいち早く教えてくれるのが、うんちです。
だから私は、うさぎの飼い主さんには必ずこう言います。
「うさぎのうんちを見てください。毎日、ちゃんと見てください。」
硬便は毎日100個以上
健康なうさぎは、コロコロと乾燥した丸いうんちを、一日に100個以上排泄します。これを「硬便」と呼びます。色は濃い茶色〜黒褐色、表面は少しザラッとしていて、形と大きさはほぼ一定です。
この「ほぼ一定」というのがとても重要です。
昨日と比べて小さくなっていないか。
形がいびつになっていないか。
数が減っていないか。
つぶれていないか。
毛が異常に絡んでいないか。
これらはすべて、消化管の異常やストレス、食事内容の変化、体調不良のサインです。硬便は、うさぎの体の「正常運転」を示す証拠です。減ったり変形したりしたときは、体の中で何かが起きています。
盲腸便という、もう一つのうんち
うさぎには、もう一種類のうんちがあります。それが「盲腸便」です。これは柔らかく、ぶどうの房のようにくっついた形をしていて、強い匂いがあり、栄養が非常に豊富です。
そして重要なのは、うさぎはこの盲腸便を肛門から直接食べるということです。これは異常行動ではなく、正常な生理現象です。盲腸内で発酵して作られたビタミンやアミノ酸を再吸収するための、大切な仕組みです。
つまり、健康なうさぎは盲腸便を「残しません」。私たちが目にするのはほとんど硬便だけです。
お尻や足の裏が汚れているのは要注意
「うちの子、お尻や足の裏が汚れてしまうんですが……」
これはよくある相談ですが、実は重要なサインです。お尻や足の裏が汚れているということは、本来食べるはずの盲腸便を食べ残している可能性があります。
なぜ食べ残すのか。理由はいくつかあります。
肥満で体が硬くなり、口が肛門に届かない。
斜頸などの神経障害があって、体をうまく曲げられない。
後ろ足に麻痺や痛みがあって姿勢が取れない。
高齢や衰弱で動きが鈍くなっている。
こうした状態があると、盲腸便を食べられずに床に落とし、それを踏んだり、お尻に付けたりして汚れてしまいます。つまり、「汚れている」という見た目の問題の裏に、体の問題が隠れていることがあるのです。
下痢は緊急サイン
うさぎは基本的に下痢をしにくい動物です。だからこそ、明らかな下痢が出ている場合は、かなり強い異常を疑います。
特に注意したいのは寄生虫感染です。コクシジウムなどの腸内寄生虫がいると、下痢や軟便、体重減少、元気消失が見られることがあります。子うさぎでは重症化しやすく、命に関わることもあります。
下痢がある、硬便の形が明らかに変わった、急に数が減った、こうしたときは様子見をせず、早めに受診してください。
検便は「健康診断」の一部
寄生虫は、目に見えないことも多く、症状が軽いうちは気づかれにくい存在です。だからこそ、年に2回程度の検便をおすすめしています。特に複数飼育している場合や、外から新しいうさぎを迎えた場合は重要です。
うんちは、病院に持ってきていただければ簡単に検査できます。負担もほとんどなく、得られる情報はとても多い検査です。
まとめ
硬便は毎日100個以上、形と大きさはほぼ一定。
盲腸便は食べるのが正常、残っていたら異常のサイン。
お尻や足の裏の汚れは、肥満や病気のヒント。
下痢は緊急性が高い。
検便は年に2回。
うさぎはとても我慢強く、具合が悪くてもギリギリまで普通に振る舞います。だからこそ、毎日見られる「うんち」が、いちばん正直な健康のバロメーターです。
かわいい顔やしぐさを見るのと同じくらい、ぜひ、うんちも見てあげてください。そこに、その子の体からのメッセージが詰まっています。