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ハリネズミ

大量の血尿のような出血が見られた2歳のハリネズミ

子宮の病気を疑い、卵巣と子宮の摘出手術を行った症例

今回は、大量の血尿のような出血が認められ、子宮の病気を疑って卵巣と子宮の摘出手術を行った、2歳のヨツユビハリネズミ、うなちゃんの症例をご紹介します。

手術後はまだ自分だけで十分な量の食事を取ることが難しいため、流動食を少しずつ与えながら、体力の回復を待っています。

大量の血尿のような出血が見つかりました

今回、飼い主様が気づいた異常は、大量の血尿のような出血でした。

ハリネズミのケージ内に赤い尿や血液が見つかった場合、膀胱や尿道などの泌尿器から出血しているとは限りません。

女の子のハリネズミでは、子宮や膣などの生殖器から出た血液が尿と混ざり、「血尿」のように見えることがあります。

出血の原因としては、次のような病気が考えられます。

  • 膀胱炎
  • 尿路結石
  • 膀胱や尿道の腫瘍
  • 子宮内膜の異常
  • 子宮炎や子宮蓄膿症
  • 子宮のポリープ
  • 子宮や膣の腫瘍
  • 外傷による出血

見た目だけで出血している場所を判断することは困難です。

特に大量の出血が認められる場合には、貧血や体力低下を起こす可能性もあるため、早急な診察が必要です。

子宮の病気を疑って検査を進めました

ハリネズミの血尿の場合は、子宮を含む生殖器の病気の可能性が高いです。

血尿や陰部からの出血が見られる場合には、身体検査に加えて、必要に応じてレントゲン検査、超音波検査、血液検査、尿検査などを行います。

レントゲン検査では、膀胱結石の有無や、お腹の中の臓器の大きさなどを確認します。

超音波検査では、膀胱内の状態や子宮の腫れ、子宮内部の液体、しこりなどを調べます。

血液検査では、出血による貧血の程度、炎症反応、肝臓や腎臓などの状態を確認します。

ハリネズミは臆病で体が小さいため、検査が非常に難しく、症状から鑑別して診断を進めるケースが多いです。

子宮がんを疑い、摘出手術を行いました

本症例では、子宮の腫瘍性疾患を疑い、卵巣と子宮を摘出する手術を行いました。

子宮に腫瘍や強い炎症がある場合、止血剤や抗菌薬などの内科治療だけでは根本的な改善が難しいことがあります。

出血が続けば、少しずつ貧血が進み、食欲や元気が低下します。

また、子宮内の病変が進行すると、感染や組織の損傷などによって全身状態が悪化する可能性もあります。

そのため、全身麻酔の危険性と、子宮を残すことで起こる危険性を比較し、手術が必要と判断しました。

手術では、病変が疑われる子宮と卵巣を摘出しました。

小さなハリネズミの手術には慎重な管理が必要です

ハリネズミのような小型動物では、犬や猫以上に慎重な麻酔管理が必要です。

体が小さいため、麻酔中に体温が低下しやすく、わずかな出血や脱水も大きな負担になります。

手術中は、呼吸、心拍数、体温、酸素化などを確認しながら麻酔を管理します。

保温を行い、必要に応じて点滴などで循環を支えながら、できるだけ短時間で安全に処置を終えることが重要です。

手術が無事に終わっても、麻酔から覚めた直後に完全に安心できるわけではありません。

体温が維持できているか、呼吸状態に問題がないか、手術部位から出血していないかなどを慎重に観察します。

手術後は「食べられるか」が重要です

ハリネズミを含む小型動物では、手術後に自分で食事を取れるかどうかが、回復を左右する重要なポイントになります。

手術後は、麻酔の影響、傷の痛み、入院による緊張などによって、食欲が低下することがあります。

しかし、食べない状態が長く続くと、体力が低下し、傷の回復にも影響します。

そのため、自分から十分に食べられない場合には、流動食を使って栄養を補います。

流動食を与える目的は、単にお腹を満たすことだけではありません。

  • 手術後の体力を維持する
  • 低血糖やエネルギー不足を防ぐ
  • 傷の修復に必要な栄養を補う
  • 消化管の動きを維持する
  • 自力で食べ始めるまでの回復を支える

といった大切な役割があります。

流動食は少量ずつ与えます

流動食は、シリンジと呼ばれる注射器のような器具を使用し、口元から少量ずつ与えます。

一度に多く入れるのではなく、口を動かしてきちんと飲み込んだことを確認しながら進めます。

飲み込む前に次々と流動食を入れると、気管に入って誤嚥する危険があります。

誤嚥すると、呼吸困難や誤嚥性肺炎を起こす可能性があるため、焦らず少しずつ与えることが重要です。

今回のうなちゃんは、流動食を口元へ運ぶと、上手に飲んでくれました。

痛みを抑えることも回復には欠かせません

手術後に食べない原因のひとつに、傷の痛みがあります。

動物は痛いと声に出して訴えるとは限りません。

ハリネズミでは、丸まったまま出てこない、動かない、食べない、呼吸が速い、触られるのを嫌がるといった変化が、痛みのサインである可能性があります。

痛みが強いままでは、食欲が戻らず、体力の回復も遅れてしまいます。

そのため、手術後は状態に応じて鎮痛剤を使用し、できるだけ苦痛を抑えながら回復を支えます。

今回も抗菌薬、点滴などの注射を併用し、温度管理も慎重に行いました。

術後は出血や傷口の状態を観察します

卵巣と子宮を摘出した後は、出血が止まっているか、傷口に異常がないかを確認します。

ご自宅へ戻った後も、次のような点を観察してください。

  • 再び尿や床材に血液が付いていないか
  • 傷口が赤く腫れていないか
  • 傷口から液体や血液が出ていないか
  • 傷口をなめたり、かじったりしていないか
  • 自分から食べているか
  • 水を飲んでいるか
  • 便や尿が出ているか
  • 体が冷たくなっていないか
  • 呼吸が速くないか
  • ぐったりしていないか

ハリネズミは夜行性のため、日中に動かないこと自体は珍しくありません。

しかし、夜になっても活動しない、好物にも反応しない、体が冷たいといった場合には注意が必要です。

病理検査で子宮の病気を詳しく調べます

今回の手術では、子宮がんを疑って卵巣と子宮を摘出しました。

しかし、「見た目が腫瘍らしい」というだけでは、良性か悪性かを確定することはできません。

摘出した子宮を病理検査に提出することで、炎症、ポリープ、良性腫瘍、悪性腫瘍などを詳しく調べることができます。

悪性腫瘍であった場合には、腫瘍の種類や広がり方によって、術後の経過観察方法も変わります。

必要に応じて、胸部や腹部の画像検査を行い、転移を疑う異常がないか確認することもあります。

手術で病変を取り除いた後も、病理検査の結果を踏まえて定期的に状態を確認することが大切です。

今回は摘出した組織を病理組織検査に提出した結果、子宮癌と診断されました。

血尿や陰部からの出血は早めにご相談ください

ハリネズミのケージ内に血液が見つかっても、

「少しだけだから様子を見よう」

「どこから出ているのか分からない」

と、受診を迷うことがあるかもしれません。

しかし、ハリネズミは体調不良を隠す傾向があり、明らかに元気や食欲が低下した時点では、病気が進行していることがあります。

特に次のような場合には、できるだけ早く動物病院へご相談ください。

  • 尿や床材に血液が付いている
  • 陰部の周囲が血液で汚れている
  • 出血を繰り返している
  • 出血の量が多い
  • 食欲が低下している
  • 体重が減っている
  • お腹が膨らんでいる
  • 動きが少ない
  • ふらついている
  • 歯茎や口の中が白っぽい

出血が一度止まったように見えても、子宮などの病変がなくなったとは限りません。

症状が軽いうちに原因を調べることが、治療の選択肢を増やすことにつながります。

うなちゃんの回復を流動食で支えています

今回のうなちゃんは、大量の血尿のような出血が認められ、子宮の病気を疑って卵巣と子宮の摘出手術を行いました。

手術後はまだ十分な量を自力で食べられないため、流動食を少しずつ与え、体力が回復するのを待ちます。

手術が無事に終わることはもちろん重要ですが、その後に体温を維持し、痛みを抑え、食事を取れるようになるまで支えることも治療の大切な一部です。

※本記事は当院で診療した症例をもとに、飼い主様のご了承を得たうえで、個人が特定されないよう配慮して掲載しています。出血の原因、必要な検査、手術の適応、術後の治療内容は、それぞれの状態によって異なります。子宮がんなどの確定診断には、原則として摘出組織の病理検査が必要です。