食べない時間を長引かせないことが重要です
食欲が低下し、便の量も少なくなったうさぎに、流動食を与えている様子をご紹介します。
うさぎの診療では、
「いつもより食べる量が少ない」
「牧草を食べなくなった」
「便が小さくなった」
「便の数が減った」
というご相談が非常に多くあります。
うさぎは、何らかの原因で食べる量が減ると、消化管の動きも低下しやすい動物です。
消化管の動きが悪くなると、さらに食欲が落ち、便が出なくなり、脱水や体力低下が進むという悪循環に陥ることがあります。
そのため、食欲不振の原因を調べて治療すると同時に、必要に応じて流動食を与え、栄養と消化管の動きを維持することが大切です。
うさぎは食べなくなると急速に状態が悪化します
うさぎの消化管は、牧草などの繊維質を継続的に食べることで正常な動きを保っています。
食べる量が減ると、胃や腸へ送り込まれる繊維も少なくなり、消化管の動きが低下します。
消化管の内容物が停滞すると、胃や腸にガスがたまり、腹痛が起こることがあります。お腹が痛くなると、うさぎはさらに食べなくなります。
食べないことで便の材料も入ってこなくなるため、便は小さくなり、数が減り、やがてほとんど出なくなることもあります。
つまり、
食べない
消化管が動かない
お腹が痛くなる
さらに食べられない
という悪循環が起こってしまうのです。
食欲不振は病名ではありません
「食欲がない」「便が出ない」という状態は、それ自体がひとつの病気というわけではありません。
うさぎが食べなくなる原因には、さまざまなものがあります。
代表的な原因としては、次のような病気が考えられます。
- 胃腸うっ滞
- 腸閉塞
- 歯の不正咬合
- 臼歯の伸びすぎ
- 歯根や顎の異常
- 胃や腸へのガスの貯留
- 腎臓や肝臓の病気
- 膀胱炎や尿路結石
- 子宮や卵巣の病気
- 感染症
- 発熱
- 関節や背骨などの痛み
- 強いストレス
- 食事や飼育環境の急な変化
- 暑さによる体調不良
原因によって必要な治療は異なります。
単に胃腸を動かす薬や流動食を与えるだけでは改善しない病気もあるため、まず食欲不振の原因を調べることが重要です。
レントゲン検査でお腹の状態を確認します
食欲不振や便の減少が見られるうさぎでは、レントゲン検査が重要です。
レントゲン検査では、胃の大きさ、胃や腸にたまっているガスの量、消化管内容物の状態などを確認します。
特に注意しなければならないのが、胃腸うっ滞と腸閉塞の区別です。
胃腸うっ滞では、消化管全体の動きが低下しています。
一方、腸閉塞では、毛や食べ物などが腸の一部に詰まり、消化管の内容物が先へ流れなくなっている可能性があります。
腸閉塞が疑われる状態で、自己判断により大量の流動食を与えると、胃の内容量が増え、状態を悪化させる危険があります。
そのため、「食べないから、とにかく強制給餌をすればよい」とは限りません。
まず診察やレントゲン検査を行い、流動食を与えても安全な状態か確認する必要があります。
血液検査で全身状態を評価します
食欲不振が続いている場合には、血液検査を行うことがあります。
血液検査では、脱水の程度、貧血、炎症、肝臓や腎臓の状態、血糖値などを確認します。
うさぎは食べない状態が長く続くと、体内のエネルギーが不足し、肝臓へ脂肪が蓄積する脂肪肝などの代謝異常を起こすことがあります。
また、食欲不振の原因が消化管の問題ではなく、腎臓や肝臓などの内臓疾患であることもあります。
見た目や触診だけでは判断できない異常を確認するために、必要に応じて血液検査を行います。
検便や口腔内検査も行います
便の異常がある場合には、検便を行い、寄生虫や消化状態などを確認します。
ただし、便がほとんど出ていない場合には、検査に必要な便が十分に採取できないこともあります。
また、うさぎの食欲不振では、歯の異常も非常に多く見られます。
うさぎの歯は生涯伸び続けます。
歯のかみ合わせが悪くなったり、奥歯が尖ったりすると、舌や頬の粘膜に当たり、強い痛みが生じます。
その結果、牧草を食べなくなったり、柔らかい物だけを選んで食べたり、食べ物を口からこぼしたりするようになります。
必要に応じて口腔内を詳しく確認し、レントゲン検査によって歯根や顎の骨の状態も調べます。
原因の治療と同時に流動食を与えます
検査によって腸閉塞などの危険な状態が否定され、流動食を与えてよいと判断した場合には、原因に対する治療と並行して給餌を行います。
流動食を与える目的は、単に空腹を満たすことだけではありません。
栄養や水分を補給して体力を維持するとともに、消化管へ内容物と繊維を送り込み、胃腸の動きを回復させることが目的です。
食欲不振のうさぎには、状態に応じて点滴、鎮痛剤、消化管運動を促す薬などを使用します。
しかし、薬だけで胃腸を動かそうとしても、消化管の中に新しい内容物が入らなければ、十分な回復につながらないことがあります。
そのため、安全に給餌できる状態であれば、流動食は非常に重要な治療のひとつになります。
少量ずつ、飲み込むことを確認しながら与えます
流動食は、シリンジと呼ばれる注射器のような器具を使用し、口の横から少しずつ与えます。
一度に大量に入れるのではなく、うさぎが口を動かしてモグモグと噛み、きちんと飲み込んでいることを確認しながら進めます。
うさぎが飲み込む前に次々と流動食を入れると、口の中にたまり、気管へ入ってしまう危険があります。
流動食を誤嚥すると、呼吸困難や誤嚥性肺炎を起こし、命に関わることがあります。
また、うさぎの頭を上へ向けすぎると、かえって飲み込みにくくなります。
顔を自然な位置に保ち、落ち着いて飲み込める量を少しずつ与えることが大切です。
完全に弱ると流動食を飲み込めなくなります
流動食は、うさぎが自分で口を動かし、正常に飲み込める段階で行うことが重要です。
食欲不振を長く放置して体力が大きく低下すると、流動食を口へ入れても、モグモグと噛んだり、ゴックンと飲み込んだりできなくなることがあります。
口の中に流動食をため込んだり、そのまま口から流れ出たりする状態です。
この段階になると、誤嚥の危険が高くなり、通常の方法で給餌を続けることが難しくなります。
体温低下、脱水、循環不全などが進んでいる場合には、まず保温、点滴、酸素管理などによって全身状態を安定させる必要があります。
「まだ少し動いているから大丈夫」と受診を先延ばしにすると、治療の選択肢が少なくなってしまうことがあります。
自宅で無理に食べさせる前にご相談ください
流動食は大切な治療ですが、すべての食欲不振に自己判断で行ってよいわけではありません。
特に、次のような状態では早急な診察が必要です。
- まったく食べない
- 便がほとんど出ていない
- お腹が張っている
- うずくまって動かない
- 歯ぎしりをしている
- 呼吸が速い
- 体が冷たい
- 横になっている
- 水も飲めない
- 流動食を飲み込めない
- 口から流動食がこぼれる
- 急にぐったりした
腸閉塞や重度の脱水、低体温などがある場合には、ご家庭で強制給餌を続けることが危険なこともあります。
まず動物病院へ連絡し、現在の様子を伝えてください。
食欲が少し落ちただけでも早めの受診を
うさぎは体調不良を隠す傾向があり、明らかにぐったりした時点では、すでに状態が進行していることがあります。
「まったく食べなくなってから」ではなく、次のような小さな変化の段階で受診することが大切です。
- 牧草を食べる量が減った
- 好きな物だけを食べる
- 食べる速度が遅くなった
- 便が小さくなった
- 便の数が減った
- 便の形が不揃いになった
- いつもより動かない
- じっとしている時間が増えた
便が少し出ているからといって、必ずしも安心できるわけではありません。
消化管に残っていた内容物が便として出ているだけで、新しく食べた物が十分に流れていない可能性もあります。
毎日の食事量と便の量、形、大きさを確認することが、異常を早く見つけるために役立ちます。
流動食は回復を支える重要な治療です
今回のうさぎには、食欲不振の原因を調べるための検査と治療を行いながら、体力維持と消化管の回復を目的として流動食を与えました。
うさぎの食欲不振では、レントゲン検査、血液検査、検便、口腔内検査などを組み合わせ、原因を調べることが重要です。
そのうえで、腸閉塞などの危険な状態がないことを確認し、必要に応じて流動食を少量ずつ与えます。
食べられない時間が長くなるほど、消化管の動きや全身状態が悪化し、回復までに時間がかかる可能性があります。
完全に弱って飲み込めなくなる前に治療を始めることが大切です。
食欲や便の量、形に少しでも異常を感じた場合には、長く様子を見ず、できるだけ早くうさぎを診察できる動物病院へご相談ください。
※本記事は当院で行っている診療をもとに、飼い主様向けに分かりやすくまとめています。流動食を与えてよいかどうか、必要な量や回数は、食欲不振の原因や全身状態によって異なります。腸閉塞などが疑われる場合には、自己判断で強制給餌を行わないでください。


